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作成日:2018/04/02
イカダで大海を渡る

 

 なにかとバタバタ忙しく、常に浮足立っているような心持ちの毎日を過ごしていると、表題テーマのような書籍を読んで現実逃避したくなる。「コン・ティキ号探検記」という書籍だ。今から70年ほど前に人類学者である著者が、古代の筏を複製してペルーから出帆し、貿易風と海流だけを推進力として、3ヶ月あまりでポリネシアに到達した航海記である。豊富な海水魚を捕らえて食べながら、比較的順調に太平洋を渡り切る。挿絵に使われている当時の写真が一層の想像力をかきたてる。

 

 読み物としても秀逸なので一読をお勧めするが、こうした航海の物語を読むと、結局、現実的に会社経営とダブらせてイメージしてしまう。自分ひとりで起業するのは、あたかも独力で筏を作って大海に漕ぎ出すようなイメージだ。十分な浮力をもって沈没しないようあらゆる作業を独りで行う。航海がある程度軌道に乗ってきてはじめて、新たに乗組員を募り、独りでは賄いきれない作業を任せる。乗組員を乗せすぎると小さな筏はあえなく沈没するので、常に必要最小限の人数だ。

 

一方で、最初から中型船や大型船の船長を任される場合もある。事業承継のケースである。最初から熟練クルーがいて、操舵システムがあり、船の推進力もかなりあるという強力なアドバンテージがある(そうでない危険な状況での承継もあるが)。船長は指揮官としての職務に専念できる。とはいえ、船の全体状況の把握やその操縦も船長ひとりではままならない規模であるためクルーとの信頼関係が不可欠となる。その上で、海が荒れたらどう切り抜けるか、凪いだらどう推進させるか、そもそもどこを目指すのかなど、指揮官としての責任はクルーの人数分だけ大きくなる。

 

ちなみに、このようなイメージをしていく中で、ふと、会社にとっての借金とはなんだろうと考えると、「船の推進力を上げるために必要なもの」とイメージされる。ただし、それによってうまく推進力を得られないと、それは沈没の主因である重石となる。実際、推進力はないが借金がないために沈没を免れているという小舟はわりとある。沈没しないことを第一義とするならば、立派な操船だと本当に思う。逆に、推進力はあるのに、それ以上の重石に耐えきれずに沈没する船もよくあるからだ。

 

そんなことを考えていたら、3月が終わり、また新たな年度が始まる。気持ちも新たに、縁ある船長の航海の助けができることをイメージして職務に邁進したいと考えている。

 

山 鹿 真 吾