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作成日:2015/09/18
仕事のルーツ

 古来より、およそ金(カネ)の出入りがあるところには帳簿の記入というものがあったのだろうと推測する。記録に残るところでは、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(紀元前63年〜紀元14年頃)は会計帳簿をつけており、帝国の基盤を確立するのに利用していたようである。それから時代は下り、使い勝手の悪いローマ数字からアラビア数字の採用を経て、中世イタリアで複式簿記が発明されたのは有名な話である。史上最も早い複式簿記の帳簿は1300年頃のものといわれている。

 会計帳簿は組織運営のための強力なツールである一方で、その時代における「カネ勘定」に対する倫理観(キリスト教的倫理観や中世ヨーロッパの騎士道精神的な倫理観など)や、莫大な債務について「現実を直視したくない」人間の性などが相俟って、帳簿の適切な記入や利用が度々ないがしろにされた。そしてそれに伴って(国家などの)繁栄と衰退が繰り返されてきたという歴史があるようである。

 中世フィレンツェの大銀行家で、当代で最も栄華を誇る名家となったメディチ家もしかり。コジモ・デ・メディチ(1389年〜1464年)の複式簿記による金の管理のうまさ等によって、富が富を呼び寄せていたメディチ家ではあるが、その孫のロレンツォの代が終わる頃には、(新プラトン主義への傾倒が原因といわれる)会計管理の怠慢によって、その栄華もあっけなく終焉する。

 その後、1602年のオランダ東インド会社が世界初の株式会社として成立するに至り、新たに株主への説明責任という側面も担うようになった会計帳簿の重要性はますます大きくなるとともに、古来より存在した二重帳簿、不正経理への対応として、制度としての会計監査が導入される契機となる。

 新大陸のアメリカでは1776年の建国時(それ以前の入植時)より、大陸横断鉄道の敷設、そして2008年リーマンショックの今日にいたるまで、会計不正等による社会的な混乱に対処すべく現代的な会計制度や監査制度を作り上げてきた。           (ジェイコブ・ソール著「帳簿の世界史」を参照。)

 

 以上、先日読んだ書籍の概観である。自分が携わっている仕事の歴史を振り返ってみることは、その仕事が存在する背景や本来の意義を考え、今後の仕事への取り組み方を見つめるよい機会になると感じた。

 また、この書籍によって会計帳簿そのものの意義にも改めて触れることができた。帳簿の重要性を再度、顧問先のみなさんと共有して、職業会計人としてよりよい業務活動を通じて顧問先の発展に寄与したいという思いを強くした。

                                             山鹿真吾